好きになった人、愛した人。
靴を脱いで上がる暇もなく、叔母さんがあたしにその雑誌を突き付けてくる。


「見て見て、これ!」


そう言われたって、あまりに近くて文字が読めない。


あたしは叔母さんから雑誌を受け取り、顔から離して文字を目で追った。


それは文芸雑誌らしく、さまざまな文学賞の募集が書かれている。


「ここよ、ここ」


叔母さんが指をさす先に視線をやると……。


そこには太一の名前が書かれていた。
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