好きになった人、愛した人。
今日は、久しぶりにその感覚が蘇ってくる。


「太一、授賞式とかはないの?」


から揚げを口に運びながら訪ねてみると、


「あるけど……でも、欠席しようと思ってる」


と、太一は答えた。



「どうして? 記念になるのに」


「そうかもしれないけど……俺には、人前はまだちょっと……」


情けなさそうに言う太一に、あたしは「そっか」と、明るく返事をした。


考えを無理強いしてはいけない。
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