好きになった人、愛した人。
「だって! 本当は奈生に会えないなんて辛いだもん! 手術まで、毎日だって会いたい!」


《全く、お前は……》


呆れたような声。


そうだよね。


年上のあたしがこんなわがまま言ってたんじゃ、呆れるに決まってるよね。


《俺だって、毎日チハヤに会いたい。好きだって伝えたい。触れていたい。でも、今は違うんだろ?》


「奈生……」


《いいか、チハヤ。俺はお前を手放すつもりはない。なにがあっても、絶対にだ。


「うん」


《だから、今一旦離れるのなんてほんの一瞬だ》


本当は、、手術が永遠の別れになるかもしれないと、あたしたちは知っていた。
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