好きになった人、愛した人。
奈生は淡々とした口調でそう言った。


奈生がこれほど華奢で色白で童顔な理由が分かった気がした。


ろくに外に出ることができなかったから、しっかり筋肉をつけることもできなかったのだろう。


まるで、奈生1人みんなとは進む時間が違っているみたいに。


「嫌なら、断っていいよ」


「え?」


「カテキョのバイト」


そう言われ、グッと返事に詰まる。


正直、不安はある。


でも、矢原がわざわざ弟をあたしに預けてくれるというのに、そう簡単に投げ出すことはできない。
< 29 / 395 >

この作品をシェア

pagetop