好きになった人、愛した人。
「え?」


「奈生が我慢してること。俺も、我慢してたこと。親父やお袋の気持ちもちゃんと聞いておこうと思う」


「そっか。それがいいかもね」


「あぁ。奈生の手術の前に、ちゃんとしとかなきゃって思ってさ」


その言葉に一瞬胸が痛んだ。


今話さなきゃ、これからどうなるかわからないから。


そんな意味を感じ取ったから。


「あ、でも、マイナスな意味があるワケじゃないからな」


不安な心を打ち消すように、矢原は慌てて首をふった。
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