好きになった人、愛した人。
「大丈夫よ、断らないわ」


「俺の病気、先天性の心臓病。

もう何度も手術を繰り返してるけど、良くならない。

発作が起きるたびに、今度こそ死ぬかもって。いや、実際死ぬかもしれない。それでも?」


まくしたてるように早口で言い、ふっと短く息を吐き出す。


まるで、自分に近づくことを拒んでいるようにも見える。


奈生の黒い瞳が闇そのものに見えて、胸が圧迫される感覚に苦しさを覚えた。


「あたしは、そんなの……」


「気にしないって言いきれる?」


先に言われて、言葉を失った。


「自分がカテキョで教えてた生徒が、ある日突然死んでも?」
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