好きになった人、愛した人。
☆☆☆

とうとう、納得できるものは作れないままだった。


大学を出て、肩を落として歩いていると冷たい風が通り越していった。


「さむっ……」


亀のように首をすぼめてその冷たさに耐えていると、急に物悲しくなってくる。


お菓子にパンチが出ないのは、今のあたしにパンチがないからじゃないか。


今回のコンテストがダメでも諦めるつもりなんてないけれど、戦いにいくのだと思うと自然とへっぴり腰になっていた。


挫折がこわくないわけが、ない。


明日手術を受ける奈生だって、きっととてつもなくこわいんだろう。
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