好きになった人、愛した人。
「わかった。期待しとく」


奈生らしい言葉に、今はホッとしている。


なんだか、心のわだかまりが取れるような、不安がかき消されるような。


そんな魔法を持っているのじゃないかと、思ってしまう。


《それから、昨日家族で本音を言い合った》



「そうなんだ。どうだった?」


あたしは、矢原の後ろ姿を思い出していた。


《結局、みんなどこか遠慮や我慢をしててさ。もうちょっと腹割った家族になろうぜって兄貴が言ってた》



「へぇ。それで、奈生の二重人格はどうするつもり?」
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