好きになった人、愛した人。
《それは、もうやめた。『僕』なんてガラじゃねぇし》



その返事に、あたしは小さく笑った。


「ほんと、『僕』とか似合わないよね」


《悪かったな、似合わなくて》


「ちょっとだけ、可愛かったけどね」


付け加えてそう伝えると、『余計なこと言うな』と、怒られてしまった。


《家族で話せてよかった。チハヤの家族みたいになれたかどうかはわかんねぇけど。でも、確かに溝は埋まった気がする》



「そっか……よかったじゃん」


《あぁ。兄貴の足のことも。もう気にするなって》


「……うん」
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