好きになった人、愛した人。
そして、チンっと無機質な音が響き、ドアが開く。


あたしは真っ直ぐに奈生の病室へと向かった。


病室のドアには、相変わらずチューリップの折り紙が目印としてかざってある。


そして、ノックをしようと右手を上げて……。


「あ……」


と、呟く。


ダメだ。


今ノックをしても、きっと奈生は返事をしない。


だって、手術した後なんだもん。


鎮静剤を打たれて眠っているか、傷口の痛みに耐えているか、そのどちらかの状態にいると考えるのが自然だから。
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