好きになった人、愛した人。
「ありがとう、みんな! あたし、頑張ってくるからね!」


キャリーケースの取っ手を握る手にグッと力を込める。


コンテストが終わって今日まで、1度も奈生からの連絡は来ていなかった。


矢原に直接電話してみても、携帯番号を変えられていて話はできなかった。


結局、奈生の手術の結果はわからないまま。


もしかしたら、最悪の結果が待ち受けていたのかもしれない。


いてもたってもいられなくなって、留学なんて断ってしまおうかと何度も考えた。


でも……。


あたしは今、こうして空港にいる。
< 347 / 395 >

この作品をシェア

pagetop