好きになった人、愛した人。
むしろ落としてくれたほうがマシだったけれど、あたしはグッと言葉を飲み込んだ。


この状態でいると、奈生の心音がよく聞こえてきたから。


お姫様だっこは恥ずかしいけれど、この音を聞いているとすごく安心できた。


奈生はそのまま家の玄関を起用にあけて、2階の部屋にあたしを連れて入った。


どうやら、家には誰もいないようだ。


部屋は見たことも入ったこともなかったけれど、奈生と同じ香りがしたから、この部屋が奈生の部屋だとすぐにわかった。


奈生はあたしをベッドに座らせると、「足を冷やすために氷持ってくる」と言って、またすぐに出て行ってしまった。

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