好きになった人、愛した人。
あたしはその名刺を見つめて、ぷっと頬を膨らませる。


「なんだよ、行きたいのか?」


「……うん」


うなづくと、奈生は驚いた表情をしてあたしをみた。


教会とか今までまったく無縁で興味も示さなかったあたしが、行きたいというのでビックリしたんだろう。


奈生はベッドから下りてきて「行くか?」と、あたしの頭をなでた。


その瞬間、パァッと笑顔になる。


なんだかわからないけれど、あの男性が名刺をくれたときに、行かなきゃいけないって、感じたんだ。


行かないと後悔する。


今も、そんな気持ちがある。
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