好きになった人、愛した人。
「すごいわね。上手」


「だからさ、キスのお詫び、肖像画でもいい?」


「え?」


その言葉に驚いて振り返る。


すると、すでに奈生の手にはスケッチブックが握られていて、問題集はあたしのカバンの上にポンと置かれていた。


「ダメって言っても、きかないんでしょ?」


「まぁね」


答えてから楽しそうに笑うその表情に、一瞬胸が跳ねた。
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