好きになった人、愛した人。
机に両肘をついて、両手に顔をうずめる。


太一は元々、あんなんじゃなかった。


もっと社交的で、行動力もあった。


「もしかして、自分のせいとか思ってないよね」


ヒナタの言葉に、あたしは顔をあげる。


怒った顔をしているヒナタに、なにも言えなかった。


「チハヤのせいじゃないよ?」


「……ありがとう」


ヒナタの優しい言葉はあたしの胸にとどまることなく、ただ右から左へと通過するだけだった……。
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