好きになった人、愛した人。
お世辞にもおいしいとは言えなかったのだろう、一瞬、眉間にシワを寄せた。


その表情が奈生に似ていて、キュッと心臓が締め付けられる。


「それ、合ってると思うよ」


「は?」


「矢原と奈生なら、みんな奈生を選ぶと思う。奈生を、ちやほやすると思う」


現に、今のあたしもそうだった。


矢原が好きだったのに、今は奈生をかぶせて矢原を見るようになっている。


「そっか……」


寂しそうに視線を伏せる。
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