好きになった人、愛した人。
こけそうにるのをなんとかふんばって、バッグの取っ手を引っ張り合う。


やめて!


これは、大学に入学したときに叔母さんが買ってくれたバッグなの!


そう叫びたいのを必死で我慢する。


実の親が1人息子よりも、姪っ子であるあたしに期待している。


それが太一にとって一番プライドを傷つけられることだから。


いくら部屋から出ていなくても、運動していなくても、男の力にはかなわなかった。


バッグを奪い取られ、中身がグリーンの絨毯の上に散乱する。
< 86 / 395 >

この作品をシェア

pagetop