好きになった人、愛した人。
あたしのお母さんとお父さんは、あたしが小学校6年生の頃に事故死した。


それからはずっと、沼本家と一員としてここで生活させてもらっている。


「ただいまぁ」


叔母さんの趣味の庭を抜け、白い玄関を開ける。


玄関のドアには鈴がつけられていて、開けるたびにオシャレな喫茶店のように軽やかな音色を響かせた。


「お帰り、チハヤ」


大学から戻ると、まず最初にキッチンへ向かう。



すると大抵叔母さんが夕飯の支度をしているので


「ただいま」


と声をかけ、それから隣のリビングのソファにバッグを放り投げ、夕飯の準備を手伝う。
< 9 / 395 >

この作品をシェア

pagetop