好きになった人、愛した人。
「チハヤちゃんが奈生の家庭教師をしてくれてるって、有生から聞いてたわ」


おばさんが、あたしを椅子に座るように手で合図しながら言ってきた。


「あ、はい」


お世話になるのだから、こちらから自宅へ挨拶に行ったほうがよかったのだろうかと、一瞬不安がよぎった。


しかし


「ありがとう」


というおじさんの言葉で、その不安は打ち消された。


「チハヤちゃんが来てくれだしてから、奈生が元気になってな」


その言葉に、あたしはベッドの上の奈生を見る。
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