不機嫌な果実
「おい、勝手に手なんか出してんじゃねえ」

低い声で男を脅す。

・・・

オレはこう見えて、結構喧嘩には強い方。

見た目は華奢だが、

腕っぷしは強い。

それを知ってるやつらは、絶対俺には手を出してこない。

「前田凌也」

・・・

制服を払いながら、

男が呟いた。

「今度、コイツに手出したら、許さねえから」

「・・・!!」

一気に青ざめた男は、

こけながら、屋上を出ていった。

・・・

ったく。

どうしようもない野郎だ。

溜息をつきながら、オレも、ドアに向かって歩き出す。

桃子に話しかける勇気がオレにはなかったから。

「なんで助けたのよ?」

背中にそんな声が聞こえた。

オレは振り返る事もせず、


「・・・別に。

ただオレが寝てる所で、ラブシーンとか

うっとうしいし・・・」
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