不機嫌な果実
月曜日。いつもの時間に家を出る。

…ぁ。思わず目を見開く。

だって、門の所にもたれて、気怠そうに立っている人物が一人。

「ぉはよ・・・凌也」

「・・・よう」

私の言葉に、それだけ応えると、サッサと学校に向かって歩き出した。

私の事、待っててくれたのかな?

そうだったら嬉しいな。私は笑顔で凌也に喋りかける。

…それに対し凌也はあくびをしながら答える。

それでもこうやって普通に話してくれてるのが嬉しかった。



「…おはよ、桃子」

「ぁ、おはよ、恭治」

凌也は私の右側の一歩先を歩く。

恭治は私の左側に立ちゆっくりとした歩調で歩いている。


二人の対照的な態度が、なんだか可笑しかった。


「珍しいな、凌也と桃子が二人で登校なんて」

私に目を合わせることなく恭治が呟いた。

そんな恭治の目線は、凌也に向けられていた。


「・・・別に、ただの気まぐれ」

無表情にそう言ったのは凌也。

…今朝の恭治の凌也に対する物言いは、棘があるように感じた。

< 55 / 90 >

この作品をシェア

pagetop