不機嫌な果実
「恭治、今朝はなんだか、ご機嫌斜めだね?」

不安げな顔で恭治を見上げる私。


「別に、いつもと変わらないよ・・・ただ。

凌也が桃子の隣にいるのが気に入らないだけ」


「…恭治」

恭治の言葉に、凌也の顔は明らかにムッとしていて、

今にもケンカになりそうな雰囲気。

私は必死に恭治を制止した。


「…オレ、先行くわ」

凌也もグッと堪えたのか、それだけ言うと、私たちより、

ずっと早い歩調で、どんどん前に行ってしまった。

「凌也!」

・・・名前を呼んだけど、凌也は止まってくれなかった。


「恭治、凌也に冷たくしないで…やっと、昔みたいに

仲良くなれたのに」


「…オレの言った事、覚えてる?」
「え・・・」

・・・忘れはしない。私を好きだと言った恭治の言葉。


「オレにするのか、凌也にするのか、考えて」

「恭治」

…間もなくして、恭治も私を追い越して行ってしまった。
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