不機嫌な果実
「お待たせ」

「ううん、ゴメンね、急がせちゃった?」

「そんな事ないよ・・・行こうか」

恭治は私と歩幅を合わせてゆっくりと歩く。

…どう話を切り出せばいいか困って、

何も言えずにいた。


…その沈黙を破ったのは恭治だった。


「で?珍しく、オレの部活が終わるの見てたのは何で?」

真っ直ぐに前を向いたまま、恭治が言った。

…彼なりの優しさだった。まともに見られたら、

私が話せないんじゃないかと察してくれたみたい。



「…うん、あのね、今朝の返事なんだけど」

「・・・うん」

私はその場で足を止めた。

それに気づいた恭治も、足を止めた。


「今は、どっちなんて選んでる場合じゃないと思うの」

「…どういう意味?」

私の答えが理解できなかったのか、恭治が私の目を見つめた。


「恭治、今自分の夢の為の岐路に立ってるんじゃない?」

「・・・」

「サッカー…どっかのクラブチームに入るか、悩んでるんでしょ?」

「…何で知ってるんだよ」

恭治は溜息をついた。
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