不機嫌な果実
「ちょっと、友達から聞いて」

私はちょっと俯いた。


「確かに、将来の岐路に立たされてるのは事実だよ。

もう高3だしな?…でも、だからこそ、桃子の返事が欲しいんだ」


「…何でそんなにこだわるの?」

「そんなの決まってるだろ?凌也には、凌也にだけは、

桃子はやれないから・・・将来の道が決まってからじゃ、

遅いと思ったから、その将来の道に、桃子がいてほしかったから」


真っ直ぐに私を見つめ、心内を明かした恭治。

…こんなに、私を想ってくれる人は、他にはいないかもしれない。


私をこんなに求めてくれるのは恭治だけかもしれない。


でも・・・どうしても、引っかかる。

凌也の事が。

凌也に好きだと言われたわけじゃない。

私だって好きだって言ってないし、実際、恋愛感情があるかなんて、

まだ自分でもよくわからない。

でも、もし恭治と付き合って、凌也を失うのだけは嫌だった。



「…ありがとう、恭治。恭治の気持ちは本当に嬉しいって思うよ?

・・・でも、私は恭治を友達としてしか見れない。

彼氏と彼女の関係にはなりたくない…ゴメンね」

それを言うのが精一杯だった。
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