不機嫌な果実
「それが、桃子の気持ちになんだな?」

「・・・う、ん」

・・・しばらく沈黙が続いたけど、恭治がやっと口を開いた。


「わかった。これでこの話はおしまい・・・

もう、桃子を悩ませるようなことはしない・・・

その為に、今日限りで、友達もおしまい」

そう言って力なく笑った恭治。


「…何で、友達もおしまいなの?」

胸が締め付けられる思いで、恭治に問いかける。


「友達のまま、ずっと今みたいに一緒にいたら、

桃子の事諦められないだろ?・・・だから」

…そうか、そうだよね。

友達でいたいと思うのは、私の我が儘でしかない。


「そっか・・・そうだよね」

そう言って俯いてしまった私の肩に、恭治が手を置いた。


「…さよなら、でも、悲しまないで」

そう言った瞬間、恭治は私の頬にキスをすると、

その場を去っていった。


…さよならのキス。

私は頬を抑え、その場からしばらく動けないでいた。
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