7分の1のスキ。
ゆっくりと指を動かしながら文字を打つ。

『そだね。明日休みだし…どこ行く?』

あたしのケータイに表示される“返信完了”の文字。

「はぁ………」
ため息をつきながらうつ伏せになる。

「もう付き合って8ヶ月か……はやぁー…」
声に出して確認する自分にちょっと情けなさを感じる。
まぁ、最近うまくいってないから、もーダメかもしれないけど…

あたし、上原ちづるの彼氏、小倉奏太は容姿がいいから結構モテる。
そんな奏太があたしと8ヶ月も付き合っている理由がよくわからないけど、告ってきたのは奏太からだったんだ。


『好きなんだけど…』
『…………………は?』
名前だけ知っていた人物に呼び出されて、カツアゲでもされるのかと変な汗をかきながら、ついて来たと思ったら…

ぇ、と…なにこれ。告白されてるの…?
こんな容姿端麗な人に?

『付き合って下さい。』
その人は深く頭をさげて、あたしが“告白”だと感じさせられるような言葉を言った。

あたし、まだわかんないよ。
好き、とか…知らないの。
そんなあたしが付き合っても、きっとこの人に悪い。

だから…

スッと頭を上げた彼が、あたしを見つめた。
その目はとても、まっすぐだった。
人は恋をすると、こんな風になるのか…とわかるくらいに。

恋も知らないあたしだけど、そんなまっすぐな瞳に心臓が大きく跳ねたのがわかった。

『…………ぃ。』
『…ぇ?』
『…は、い。』

気づいたらこう答えてた。
自分でもわからないけれど、もしかしたらこの人と恋ができるかもしれない、と…そう思った。

『…まじで?』

さっきあたしをとらえていた瞳は大きく見開かれていた。

…ぁ、こんな顔もするんだ…。
またあたしの心臓が跳ねる。

『うん…』

あたしがコクリと頷くと彼の表情がぱぁぁ、と効果音でもついたかのように明るくなった。

『…っしゃあ!!』

彼は、無邪気に、まるで子供の様に、
明るい笑顔を放った。

心臓が早い。

笑った彼の顔を見て、かわいいとおもってしまったのはいまでも奏太に秘密。


あの時ほんとにかわいかったなぁ。奏太。

少し思い出してにやけていると、またケータイがなった。
< 3 / 230 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop