可愛い奴めっ!
「次って、移動教室だっけ?」
HRを終えて、莉紅に訊く。
「んぁ?…あぁたぶん。」
「そっか、じゃ一緒にいこ!」
「おう。」
私は、音楽の教科書を持って席を立つ。
クーラーが効いているこの教室は居心地がいいが、私の学園は音楽室にクーラーがないので、暑い。
―――行きたくないなぁ…。
多少憂鬱になれば、
「何、湿気た顔してんだよ。ほら行くぞ。」
と、莉紅に言われる。
っていうか、教科書で頭ぶたれたぁ!!?
「なっ、女の子の頭ぶつとかひどくない!?」
「え?女の子?どこに居るの?」
「、、、ここに居ます!!!」
「あぁ、、、そうなんだ。」
「もう~~~~っ!!ひどいよぉ!!!」
まぁ、そんなこんなで音楽室へ向かった。
「今日も、剛貴君かっこいいなぁ~…。」
音楽室で、4つ隣に見える剛貴君を眺める。
音楽は嫌いじゃないけど、剛貴君を見ていられるのはすっごく幸せ!!
―――えへへへへっ……。
「ちょっと、堂本さんっ!」
「っ!!?はい!!!」
いきなり名前を呼ばれて、急いで返事をする。
私を呼んだのは、先生だった。
「…先生の話聞いてましたか?」
「す、すみません。」
「聞いてなかったのですね。…じゃあ、歌ってください。」
「はいぃ!??」
―――歌を歌えと!?
私にその才能がある分けない!
いや、むしろ才能がどうのこうのじゃなくて、緊張して無理だよぉ。
「え、いや。先生?さすがにそれは…。」
「…なんですか?」
うっ、有無を言わせない顔してるぅ。
「はい、、、わかりました。」
―――莉紅ぅ!!こういうときは、助けてよぉ!!
そう思って莉紅のほうを見るとやたら真剣な顔をしていたので、話しかけられなかった。
「じゃ、じゃあ、、、歌います。」
なぜか歌うのは、みんなのほうを見て。
今も莉紅は、私を助けてくれる様子はなくて。。。
結局、歌うのかぁ。
スーッ、ハーッ。と深呼吸。
「ーーーー♪ーー♪♪ー♪ーーーー♪」
歌い始める。
恥ずかしすぎてみんなのほうを見れないよぉ!!
ただ、すごく静か。
「ーーーー♪ーーー♪」
歌いきった。
恐る恐ると目を開ける。
すると、視界に入る映像と音が一致した。
『パチパチパチッ。』
え?
その瞬間に聞こえたのは、みんなの拍手だった。
何?何が起こってるの?
みんなが私に、
「感動した。」
って言ってる…。
「上手いじゃない。堂本さん、音楽部?」
先生が歩み寄ってくる。
「え、いや、、、帰宅部です。」
「あら、そうなの。じゃあ、音楽部へこない?」
「。。。いや、結構です。」
何でこうなっているのか、いまいち頭で整理できなかったが、おそらく。
みんな、私の歌が上手いとか、勘違いしているのか。。。
困って、莉紅の方を見る。
やっぱり、真剣な顔。
でもさっきと違ったのは、剛貴君を見ているということ。
―――どうしたんだろう?
剛貴君を見ると剛貴君も莉紅を見ていた。
「え?何がおきてるの?」