あしたの先
千景は16歳で高校を辞めて家を出た。
半分家出のような感じで。
家族とはもうほとんど連絡を取っていない。
父、母、年齢の少し離れた兄が2人。
全員仲があまり良くなく、兄の2人はそれぞれ家を出ている。
良い思い出が無いせいか記憶があまり無いが、寄り添う事を知らない家族だったな、といまでも考える。
千景自身も人との寄り添い方を知らずに1人でなんでもやろうとするから、圭に"千景がわからない"と言われてしまうんだ、と家族のせいにしている。
16歳で家を出て、年齢をごまかし夜の世界で少し働き、それから昼間の世界に戻って生活してきた。
ホテルで働きたい、と高校生の頃から考えていたので契約社員として始めて、圭と出会い、付き合ってもうすぐ2年になる。
お金が無いなんていつもの事。
夜の仕事に戻ろうと何度思ったか。
いまだに考える時もあるが。
これから、おなかの子を産むんだとしたら、また仕事を増やさないといけないなとも考える。
彼に何も言わずに産まないでいようか。
そんな事も考えてしまう。
だってこの子を幸せにする自信が無い。
普通の家族の姿を千景は知らないんだから。
この子を産んだら。
守りきれるだろうか。
幸せにできるだろうか。
強い子に育てられるのか。
笑顔にしてあげられるか。
安心させてあげられるか。
全て、自信が無い。