【短】恋の季節 ゚+。boy's story。+゚
春に
あの日は今より少し暖かかった気がする。
そうだ。
俺は急に暖かくなった季節の変わりめに、いつもよりぼーっとしてたんだ。
街路樹の桜は満開で
落ちてくる花びらをひたすら目で追っていた俺は、突然ピタリと視線を止めた。
いや、止めたんじゃない。
止まってしまったんだ。
そこに、舞い落ちる花弁に包まれるように、小さな小さな女の子がいたから。
最初は、絵本で見た"ようせい"かと思った。
(そういえば、わくわくすると暴走するこどもだった気がする。)
俺は今でも覚えているくらい胸が高鳴るのを感じて
かけ寄りたい衝動を必死におさえて、そうっと近づいたんだ。
"どうか、きえませんように"
そう願いながら。