視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~
--- 翌日の朝。
私は早くに目が覚めて、焦る気持ちを抱えながら学校に行く仕度をしていく。
同伴者当校が解除されたのか、お母さんは今まで通りに家事を進めていて、
『もう行くの?行ってらっしゃい!』
と、私に声をかけてきたんだ。
いつもは7時に自宅を出るのに、今日は少し早めに家を出て、大輔の家に向かった。
--- ガチャッ
大輔の家のチャイムを鳴らす前に、大輔の家の扉が開く。
玄関の外に出て来たのは、スーツを着たおじさんと、エプロン姿のおばさんだった。
私に気付いたおじさんは、
『香歩ちゃん、おはよう!今日もいい天気だね?』
と話し掛けてきた。
私はおじさんの声かけに呆然と立ち尽くす。
昨日、目にしたおじさんとは別人かの様に、清々しい表情をしていて髭も綺麗に剃られている。
やつれていたはずの頬は、ふっくらとした以前のおじさんだったんだ…
何も言わない私を不思議に思ったのか、
『香歩ちゃん?どうしたんだい?』
と、私の顔を覗き込みながら問いかけてきた。
「あっ…あはっ。…おはよう。おじさん。」
やっと話し出した私に安心したのか、おじさんは私に笑顔を向けた後、後ろに立っていたおばさんに、
『じゃあ、行ってくるよ。』
と言って、歩いて行ってしまった…。