視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~

しばらくおじさんの後ろ姿を見ていたら、今度はおばさんに笑顔で話しかけられた。


「いつも悪いわね?大輔はまだ寝てるのよ…。毎度で申し訳ないんだけど、起こしてきてくれる?」


「へっ?…いつも?」


そう言わずにはいられなかった。


私…大輔の事を起こした事なんか無い…
私が家を出る頃には、
”いつも”大輔は私の家の前に、
立って待っていたんだから…


おばさんの言葉に違和感を感じた私は、試すかの様に問いかけた。


「…おばさん?…私の名前、知ってる?」


私の問いかけに、おばさんは一度目を見開いてから、吹き出すように笑った。


「何言ってるの?香歩ちゃん。おばさん吹き出しちゃったじゃない!」


「えっ…えっ?!」


「さ、香歩ちゃん。大輔起こしてきて?」


「ちょっ!…待っておばさん!」


「どうしたの?香歩ちゃん?」


「”セツ”って…知ってる…?」


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