視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~

大輔の言葉に、私は何も言い返せずに放心状態と化す。


今…”香歩”って言った…
怒り散らしてたから気付かなかったけど、
”昨日の大輔”じゃない。
”いつもの大輔”だ…


口をポカーンとさせたまま黙った私に、大輔は目の前で手をヒラつかせながら、
『来る前に、頭でも打ったんじゃね?』
と言った。


んな訳ないじゃん!
大輔の方こそおかしいんだよ!


と思いながらも、
『…違うから。ていうかさ…?』
と言って話を続けた。


「大輔さ?”清隆”とか”セツ”って人、知ってる…?」


「は?”せいりゅう”と”セツ”?何かのゲームキャラか?」


「…はぁ…」


やっぱり、覚えてないんだ…


と、私は大きな溜め息をついて項垂れた…


< 112 / 252 >

この作品をシェア

pagetop