視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~
教室に着いてから、いつもの様に香里奈の姿を探す。
今までが私の悪い夢なら、香里奈は絶対居る。
そう期待を込めて探しても、香里奈の姿は見つからない。
香里奈の席に目を向けてみたけれど、まだカバンも掛かっていなかった…。
待っても、待っても…
香里奈は来ない…
それが何を意味するのか、嫌でも分かったんだ。
夢なんかじゃない。
全部、現実。
私以外の人、全員、
記憶を消されたんだ…。
「いっそ、私の記憶も消してくれたら良かったのに…。私が”セツ”だからなの?」
そう、弱音を吐いた。
それが、本音だったんだろう。
色々な変化について行けていない自分がもどかしく、酷く疲れさせていたんだと思う。
「…でも、それじゃあ、香里奈は助けられない。これで、良かったんだ…。香里奈…どうすれば助けられる?私に出来る事って、…何?」
そう小さな声で言った後、私は机に突っ伏しながら隠れて泣いた…。