視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~
一度ぶるっと体を震わせてから、私は他の事を聞こうと口を開く。
以後どうすればいいか、それを聞いて自分の身も守らねばと思ったから。
「それ、どこでの事?私はどうすればいい?学校からは何てメール来てるの?」
「目と鼻の先よ…。うちの地区の5班にある公園。帰宅後の外出は極力控えて、当面は各家庭から保護者同伴で登校だって。」
「…そんな近くで…。」
そこまで近くだと…その強姦された子だって知ってる可能性がある。
その子の名前は伏せられたとしても、知られるのは時間の問題だ。
あの井戸端会議をしているおばさん達の姿が目に浮かんだ…。
そんなに可愛くない私だって、当事者になったらきっといたたまれない…。
私はコップに注がれたトマトジュースの水面をただぼんやりと見続けるだけで、飲むことが出来なかった。
そんな話を聞いた後に、この真っ赤なトマトジュースが”血”に見えて仕方がなかったから。