視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~

長田さんは運転席。
私は後部座席。

長田さんは、車に乗り込んでから直ぐに昨日の話を持ち出してきた。


「香歩さん。昨日の話なんだが…。」


「は、はい…。」


「市川香歩さんの事なんだが、香歩さんは幼少の頃から心臓病を患っていたらしい。」


「…心臓病…ですか?」


「ああ…。」


だから、私とは別の写真の中の”香歩”は、あんなに痩せていたのか…。


「香歩さんは中学校に入学してから直ぐ、病状が悪化して入院した様だ。」


だから、4月以降の写真が無かったの…?


「その後、6月に昏睡常態になり、6月下旬に亡くなられている。」


「……。」


「香歩さん。」


「…はい。」


「正直、私は君が”セツさん”なのでは?と、思っている。」


自分も感じていた事とはいえ、長田さんにも言われるなんて…と、私は胸を痛めた…。

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