視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~
私の叫び声を合図にするかの様に、壁から赤い液体が滲み出てきて…
部屋を赤く染め上げていく…
「あ…あぁ……なっ…長田…さん…助け…」
ボロボロと涙を流し、お尻を引き摺りながら戸の方に後退りをしていく。
その私の前に【黒い靄】が、ゆっくりと姿を表していった…
「や…やめ…っっ」
”やめて”と言いかけて、私は両手で口を塞ぐ。
だ…だめっっ
話し掛けたら…だめっっ!
自分にそう言い聞かせながら、どうする事も出来ないこの状況で、私はそのまま【黒い靄】から目を反らさずに、震える体を縮込めた。