視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~
「い…市川さん…?」
何かが違う…
長田さんは、私をいつも”香歩さん”って呼んでいたのに…
それに…
話し口調も、どこかいつもと違う…
まるで他人行儀…
長田さんは、自分の苗字をオウム返しの様に呟いた私を、不思議そうに見上げていた。
もしかしたら…
また記憶を変えられているんだろうか?
一抹の不安が私を襲った。
だから、私は確かめる様にして嘘をついたんだ…。
「長田さん…。」
「何でしょうか?」
「実は、私…昨日、取調室に入ってからの記憶がないんです。…教えてもらえませんか?」