視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~
震える足で立っていられなくなり、その場に座り込む。
あのボイスチェンジャ―とは、少し違った気味の悪い声…。
それが耳に残って、頭の中をこだましている。
何だったの…?
私を”セツ”って人と間違えた?
それに、言っていた意味は…?
殺しはしない
体を傷付けるわけない
大人に近付いた
そろそろ時期
楽しみにしてる
【セツ】
どういう意味?
なんで、この図書館にナイフを持って…。
きっと人違いだ。
でも、人違いだと気付かれていたら、
私は…今頃死んでいたのかもしれない…。
そこまで考えた後、私は慌てて立ち上がり、お母さんの元へと走った。
途中、職員さんに怒られたけれど、気にしてなんていられなかった。
一刻も早く、この場を離れたかったから。
宿題は、もう途中のままでいい…。
そう決めて、私はお母さんと自宅に帰って行ったんだ。