視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~


「お母さんっ!!お母さんっ!!誰かぁぁぁぁぁぁ!!」


泣き叫ぶ私を覆い隠すように、大輔は私の身を包み、私の耳を塞いだんだ…。


その大輔の背後では、おばさんの嗚咽の様な声と、繰り返し刺し続けているだろう音が響いていた…。




しばらくして、大輔は私の耳から手を離し、涙と雨でグチャグチャなった私の顔を拭った。

私は大輔の腕からすり抜けて、お母さんに駆け寄ろうとした。


だけど…


目の前の光景に釘付けになり、走り出せなかった…


道路には、血の付いた2本の光る凶器…

その周りに広がる赤い血…

血塗れで倒れ、動かなくなったおばさん…

腹部から血を流し、片手をついて座り込むお母さん…



「お…お母さん…?」


そう呟きながら、震える足を、一歩、一歩と進めた…。

近付く私に気付いたのか、お母さんはゆっくりと顔を上げた…。


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