視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~
自宅に帰り着いてから、私はお母さんに図書館での出来事を話した。
「何で直ぐに言わないの?!他の人に何かあったらどうするのよ?!」
そう私を叱った後、慌てて図書館に電話をかけていた。
その側で話を聞いていたけれど、どうやらまともに取り合ってくれてはいない様だった。
お母さんが溜め息をつきながら電話を切ったのが、いい証拠だ。
直ぐに話さなかったのは、怯えていたせいもあったけれど、それだけじゃない。
あの背後にいた人物が”普通の人間”とは思えない感覚に陥っていたから。
理由は分からない。
何故かそう思えてならなかった…。