視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~
お母さんは、安心したように表情を緩めたんだ…。
お母さん…
なんで”清隆”を知ってるの…?
「セツを……”月姫”を…お願いします。」
その言葉を聞いた大輔は、驚いた様に大きく目を見開いた。
「あ、あなたはっっ。」
お母さんは、微笑むだけで何も答えなかった。
なんで…
私を”セツ”と呼ぶの…?
ねぇ…お母さんっっ
私の腕を掴んでいた手を離し、お母さんは私の頬を撫でながら…
「香歩…、セツ…。愛してるわ…。」
そう囁いた後…
支えていた腕の力が抜けていって…
地面に体を横たえた…
「お母さん?!!お母さん!!!」
泣き叫びながらお母さんにすがり付いた…
その私の耳に…
遠くの方から、救急車のサイレンが…
かすかに聞こえてきていた…