視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~
黒の世界

【黒い靄】に足を踏み入れてからしばらく歩いたけれど、周りは黒一色で何も見えなかった。

歩いているはずなのに、その場で足踏みをしている感覚だった。



--- カシャン…



その音がした直後、私の目の前にはまるで時代劇の撮影で使われる家屋セットの様なものが表れ、ライトに照らされた。


「何…これ…?」


他には何も見つからない。
真っ暗で何も見えないんだ…。
だけど、体育館とかの様な閉鎖された空間ではない事は分かる。
まるで、真夜中のグラウンドにいる様な感覚だった。


その場に立ち尽くしながら家屋に目を向けると、壁を挟んで2部屋あるのが分かった。
その部屋には、クモの巣が張り、物が散乱し、壁や障子には黒い汚れが無数にある。

室内の床を良く見ると、人の手の骨らしき物が見えた。


「……っっ!!…ここ…何なの…。」


私がそう呟くと…



--- カシャン…



と音を響かせたながら、今度は家屋の前までライトで照らしたんだ…









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