視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~

口や胴体、そして足には【黒い靄】が縄状になった様な物で拘束されている。

けれど、私はまず、この血が二人の物であるかどうか確認する為に、二人の体に手を滑らせた。


「良かった…。怪我はしてない。香里奈、どこか痛い所はない?」


私の問いかけに、言葉を発する事が出来ない香里奈は、涙を流しながら大きく何度も頷いて見せた。


「そっか…良かった…。今、助けるからねっ!」


そう言って、黒い縄に手をかけたその時、私の背後から声が聞こえてきたんだ。


「そんな事をしても、無駄だよ。セツ。」


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