視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~
私がそう叫ぶと、栄はみるみると目を赤黒く染めていった…。
「小娘ガ…生意気ナ事ヲ…」
声が…、さっきまでの栄の声じゃない…
もっと低く、重みを帯びている…
「あなた…誰…。」
「私ハ【MOYA】ダ…。人間ハ、本来ノ人間ニ戻ルベキダ。」
「本来…?」
「幸福ト恐怖ハ隣リ合ワセニモカカワラズ、人間ノ欲望ハ尽キナイ…。ダカラ恐怖ヲ味アワセル。ソノ必要スラ無イ人間ナド…要ラナイノダ。」
「そんな…あなたの方が傲慢なんじゃない!」
目を赤くした栄は何も答えず、ニヤリと笑って瞼を閉じた…。
再び目を開けた時には、さっきの目に戻っていたんだ…。
「それなら、君は理解する必要はない。何を言ったところで【MOYA】は止められない。ここに居る間、取り込まれた人間は恐怖を味わい続けるだけ。だが、現世に戻る事が出来れば、本能に恐怖は植え付けられるが、記憶が無くなるのだからいいだろう?」