視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~
《 白い靄 》
胸に鋭い痛みを感じた後、目を開けて見ると、私は来た時の場所に立っていた。
どこにも傷はなく、腕もなんともなっていなかった。
栄は自分の憎しみを発散したからなのか、満足そうに笑っていたんだ…。
私は、悔しくて、悔しくて…
「あなたは…あなた自身はっ、セツの気持ちを考えた事があるの?!」
気付いた時には、そう叫んでいた。
だけど、栄は…
『裏切り者の気持ちなど、考える必要はない。君がここに居て、生きて、私の側に居るのなら。』
と、そう言った…。
あの気持ちは、
”悲しい”と思った気持ちは、
きっとセツだ…
私は、そう思った…