視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~
「お母さん!!お父さんがっ!お父さんがっ!」
そう私が叫んでも、お母さんは落ち着き払って話を進める。
「こうなる事は、分かっていたのよ。私とお父さんは、転生したんじゃない。魂だけになった私達は、あの夫婦に憑依する事しか出来なかった…。」
「えっ…。」
「私達は、セツを救いたくてさ迷っていた…。セツがあの夫婦の元に来ることを知って、私達はその家族を見ていたの。本来の”香歩”を亡くした夫婦は、絶望して二人で死を選ぼうとしていた…。だから、私達はその夫婦に憑依した。セツを守る為に…。」
「…そんな…。」
お母さんは、
『似ていたのは偶然だったわ。』
と、優しく微笑んだ…。