視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~
「香歩ねーね!来てくれたの?!」
そう言って私に駆け寄って来たのは、今年で4才になる”サクラちゃん”だった。
この子は、生まれて間もなくしてこの養護施設の前に置き去りにされていたんだ。
私がこの養護施設から出るまで、妹というよりは娘に近い感覚で可愛がった。
だから、私達の生活が安定したら、必ず迎えに来ようと心に決めていた。
「香歩ねーね?なんで今日は、こんなに人が多いのー?」
「今日は、七夕祭りだからだよ?サクラちゃんは願い事、書いた?」
「うん!へたっぴーだけど、ちゃんと自分で書いたよー!」
「なんて書いたの?」
「んとねー?しせつのみんなが、幸せになりますよーにって!!」
「…そっか。」