視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~
この施設にいる子供達の中に、幸せになれる子はどれだけいるんだろうか…。
養子に出ても、中には虐待を受けている子がいた事を知っていた私は、サクラちゃんにそれ以上の言葉を返せなかった…。
その願い事は、叶わないんだよ…
と、心の中で呟いた…
そんな私にサクラちゃんは気付くはずもなくて、
『あそこにいる人はだれ?』
『ピエロさんがいるー!』
と、楽しそうにはしゃいでいたんだ。
そのサクラちゃんが、愛しくてたまらなかった。
「香歩ねーね?」
「んー?なぁに?」
「なんでこんなに暑いのに、モコモコした黒い服を着たひとがいるのー?」
「えー?そんな人、いたっけー?」
「うん、いるよー!ほら!」
と、サクラちゃんは私の背後を指差して言った。