視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~
「連絡したのは確かに私です。職員の方は『図書館内にその様な人はいない』と…取り合って頂けませんでしたが…。」
「そうでしたか…。それで、失礼ですが図書館内で被害に遭われたのは…?」
「…娘の香歩の方です。」
「分かりました。…香歩さん?」
長田さんはそう私の名を呼んで、遠慮がちに問いかけてきた。
「…はい。」
「…怖い思いをしただろうけれど、知っている事、覚えている事、何でもいい。教えてくれるかい?」
「……はい。」