視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~
玄関の扉に額をつけて、溜め息を漏らす。
これで大丈夫…
これで…
自分を落ち着かせるように、何度もそう心の中で呟いた。
「…香歩?…どうしたの?」
お母さんが心配そうに背後から私に問いかける。
突然あんな風に長田さん達を追い出したりして、きっとお母さんに余計心配かけさせてしまった…。
私は振り返りながら、
『何でもない…』
そう言いかけた…
けど、言い切れずに…
後ろに飛び退き、背中を扉に打ち付けた。